「食べる」ために「かむ」ことが最も大事である4つの理由
口は何のためにあるのか
子どもの成長には、健全な食生活、運動、生活リズムによって、生体バランスを維持することが大切です。健全な食生活とはどのようなものでしょうか?
栄養バランスさえ整っていれば良いのでしょうか?
それだけではなく、しっかりかんで食事をすることや食事のリズムなどを考えることも必要です。
口は食べるためにあるのです。大人1人が1日3食で食べる量は約1.5kg強です。これは1年に換算すると約1トンです。
1トンと言うと牛3頭分、またはサイ1頭分くらいです。この量が10cmに満たない大きさの口から入っていくのです。
ロの働きってスゴイと思いませんか?
かむことが与える影響
毎日の食事で「よくかむ」ことが口の働きを活発にして、その刺激が歯だけでなく顔や首、脳まで影響し、骨格や筋肉を成長させるのです。この毎日の食事の差で、かむ力や筋肉の運動量は2倍も3倍も変わります。歯並びを整えるのは先生が行う矯正の力だけではありません。歯は使うためにあるのです。
毎日の食事で「よくかむ」ことで顎、筋肉と骨を育て、安定した歯並びを整えることで、またそれがよくかめることへつながっていくのです。
よって、毎日の生活で「よくかむ」「よい生活リズム」を意識することが大切です。
よくかむとどうなるの?
1.唾液がでる
食べ物が口の中に入ると、筋肉の働きとともに、食べ物を飲みこみやすくするために唾液の分泌が始まります。
その他の唾液の作用は、
- 歯や粘膜の汚れや菌を洗い流し、虫歯予防になる
- 消化を助ける
- アレルギーや発がん性物質などを無害化する
などです。*
しっかりかむことで栄養が吸収できて体の成長を助け、虫歯予防になり、さらに虫歯がないことでよくかめるようになります。
*そしゃくで健康づくり「育てようかむ力」/少年写真新聞社発行(2006) 競康長寿を担うと咬合/月刊保国連(2008.11 ) No.985
2.筋肉が働く
口の周りの筋肉は「目」や「頬」の筋肉とつながっています。しっかりかんで口を動かす、前歯でかむ、口を閉じる、ことによって顔の筋肉が発達して、「よい顔」へと導かれます。
口輪筋(こうりんきん)や頬筋を鍛えてよい顔つき(表情)に成長させることで歯が正しい位置へと導かれます。
顔の筋肉を発達させましょう!
次のことが当てはまる場合は顔の筋肉がしっかり発達していない可能性があります。しっかりかんで顔の筋肉を発達させましょう!
- ロがポカンと開いている
- 頬がだらんとしている
- 目が垂れている
- 食べ物が口からこぼれる
- 風船をふくらませられない
- ろうそくの火が消せない
また、歯は筋肉で組まれています。頬や舌の筋肉がしっかり働くことで、歯は正しい位置に自然と並びます。
3.脳へ刺激がいく
よくかむことで脳の機能が活性化され生まれる3つの効果*1,2
- 記憶力や集中力を高めます
かむ刺激が脳を活性化し、脳の機能を高めます。 - 肥満防止
脳を活性化することで食べ過ぎを防ぎ、脂肪の分解や代謝を促進します。 - リラックス効果
脳波を調べると、かむことでリラックス作用を表す「α波の増加とβ波の減少」が認められます。
かむことで頭が良くなる?
幼稚園児を対象とした比較研究では、よくかむ食事をしている児童は、そうでない児童よりも計算能力が高いことが示されています。*3
脳のバランスはかむことで活性化*4
人間の体は「昼に動く動物」として脳に体内時計(24.5時間)があり、それによって体のバランスが保たれています。
この体内時計の働きで、睡眠、体温、ホルモンの分泌などのリズムを刻んでいます。そのバランスが保てなければ、朝起きられない、夜眠れない、ぼーっとしたり疲れやすくなる、食欲がない、意欲低下などの症状が体に起こってきます。
しっかり夜に眠ることで成長ホルモンを分泌させ、朝日を浴びることで体内時計を24時間にリセットし、睡眠のリズムと朝ご飯で体温リズムを調整し、体のバランスを保つことが大切です。
また、その脳のバランスを保つ指揮者のような役割を持つ「セロトニン神経」は、「かむ」ことや「歩く」こと、「ゆっくり呼吸をする」ことなどで活性化されます。
つまり、かむことは脳のバランスを保ち、また脳のバランスを保つためには運動や睡眠などの生活習慣が大切になってきます。
脳の機能を活性化させるためのポイント
- 脳のバランスを保つ生活
- 夜更かししない
- 朝ごはんを食べる
- よくかむ、よく運動する
*1 柳沢幸江/そしゃくで健康づくり「育てようかむ力」/少年写真新聞社発行(2006)
*2 咀嚼と脳/小林義典/咬合・咀嚼が創る健康長寿/大阪大学出版(2007)
*3 船越正也・佐橋喜志夫/咀明と学習効果/歯科評論(1994)62073-84
*4 乳幼児期を大切に/東京都教育委員会(2009.11)
4.骨が成長する
かむ筋肉で大きなものは2つあります。
1つはこめかみにある「側頭筋」、もう1つは頬にある「咬筋」です。
かむことでこれらの筋肉が働き、さらにそれによって血流がよくなり、骨に栄養と刺激を送ります。これらの筋肉は脳や頭、顎の骨に刺激を与えて成長させるポンプのような役割を持ちます。
6才までに顔面の骨の80%が成長します。そのほとんどが頭と中顔面です。
残りの部分は10才から下顎を中心に成長します。女子は14才、男子は17才くらいまで成長は続きます。
よってこの成長時期に筋ポンプをしっかり働かせて骨に栄養と発育刺激を与えることが大切です。
また、歯の根は顎の骨に埋まっています。上の歯の根の先は鼻の下までのびています。かむことによって顔の骨に直接力が伝わり、その刺激で顎が成長するのです。