成長期の子どもの場合
子どもの場合、もともとそこにあるべき歯が無い、先天性欠損、あることはあっても本来生えるべき場所に生えてこない、萌出不全、さらに、本来生えるべき場所ではないところに生えてくる、異所萌出、また、決まった数以上の、余計な歯である、過剰歯、などがあります。
これらは、ほぼ出現する場所が決まっていて、小児矯正の専門家が診れば、レントゲン撮影をしなくても予測がつく場合があります。
たとえば、上の真ん中の2本の歯(中切歯)が片方(まれに両方)乳歯が抜けてもなかなか生えてこない場合、過剰歯というよけいな歯があって永久歯が生えるのを邪魔している場合があります。
お子さまは小学校入学時にお口のレントゲン撮影を
最近、子どもたちのお口の機能の発達とあごの成長不足で歯の萌出不全、異所萌出などが多くなっています。
一方、お父さま、お母さま方も、お子さんの歯並びを見て、将来的に矯正治療が必要かどうか気になるところだと思います。
したがって、小学校入学時前後に小児矯正の歯科でレントゲン撮影をしてもらうことをおすすめします。
この時期は、もう、レントゲンの器械でお口全体の規格の写真を撮れます。
これから生えてくる歯の大きさ、位置異常がないかどうか、数は少なくないか、もちろん、矯正治療が必要かどうか、よくわかります。
そして、仮に問題点が見つかったとしても、事前に早期に予測しながら対応できますので、ぜひ、撮ってもらってください。
レントゲンもデジタル式(当クリニックも設置しています)であれば、被ばく量も従来のものより半分以下になっておりますので、心配はいりません。
あと、むし歯の治療の場合、通常の矯正以外の一般歯科ではむし歯の状態が重度であるとかよほどの場合でない限り、お口全体のレントゲン撮影はしないので、歯科にむし歯治療で通っていても、先天性欠損などの問題点に気づいてもらえない場合もあります。
最近多くなっている注意すべき点について
最近の食生活の大きな変化により遺伝的影響よりも、環境的影響の方が大きくなっています。
あごの成長不足により、歯が本来生えるべきスペースが無くなり、歯が本来生えるべきところではないところに生えるケースが増えています。
それでも歯の交換期の初期の小学校低学年では、なんとか前歯は重なった状態でも生えてきますが、交換期後半の犬歯の場合は、生えるスペースが無くなり、他の大事な永久歯の歯根(しこん)にぶつかってしまい、これを溶かしてしまうケースも見かけます。
一方、下あごの場合、同じように永久歯交換期で最後に生えてくる第二大臼歯が問題になっています。
この歯はいちばん後ろにある(親知らずの手前)にある歯で、やはり生えるスペースが無いため、萌出不全や不正咬合など当クリニックに来院されているお子さま方の半数近くが何らかの問題を抱えています。
下あご第二大臼歯(12歳臼歯)の問題
この第二大臼歯は最後に生えてくる歯ですが、やはり、生える場所がなく、きれいにまっすぐ生えてくるお子さんは少ないです。
生えてきたとしても、殆どの場合内側に倒れていて、そのまま放っておくと上の第二大臼歯とかみ合いません。
中には親知らずのように手前の歯に引っかかって出てこないケースもあります。
従来では親知らず(第三大臼歯)が生える場所が無くて、かえって他の歯に良くない影響を及ぼしてしまうため、抜くのが通常でしたが、あごの成長が悪くなり、その手前の第二大臼歯も“親知らず化”してきたといえるでしょう。
この歯を問題なく萌出させるためには、早期(少なくとも2年くらい前)からかみ方指導、機能トレーニング指導を行っていく必要があります。
そしてお子さんご本人のやる気が必須です。
大人の歯並び・かみ合わせの問題
大人の場合、現状、今の“歯並び・かみ合わせ”は長年の習慣、体質、かみ方、習癖などからつくられた結果、であります。
それぞれの個性に合わせて、絶妙のバランスを保ちながら、その中で、最も歯に負担が無く、歯をしっかりと骨で支えられるところに歯が並んでいるのです。
ということは、見かけはともかく、歯にとってベストの位置に並んでいるのです。
かみ合わせも同様にその人のかみ方、生活習慣、食生活に合わせてつくられているのです。
そして、言い方を変えると、勝手に歯を動かすことによって、
その“絶妙なバランス”が崩れ、見た目は良くなったとしても、かみにくく、歯の持ちも悪くなってしまうのです。
したがって大人の場合、歯並び、かみ合わせをあまり大幅に変えない方がいいということです。
ですから、大人の場合、当クリニックでは、永久歯を抜かずに、奥歯のかみ合わせはできるだけ変えずに、可能な範囲で歯を動かしています。