不正咬合の種類と原因
- 上顎前突(出っ歯)
- 反対咬合(受け口)
- 開咬(かいこう)
- 叢生(そうせい)
1.上顎前突(じょうがくぜんとつ)
いわゆる“出っ歯”という上の前歯が前に出ている状態です。
*原因
上顎前突の殆どの場合、下顎が後ろに下がって、相対的に上の前歯が前に出てしまっている状態です。
下顎がなぜ、後ろ(後方)に下がるかというと、大きく2つの理由が考えられます。それは、かみ方が良くないためと姿勢が良くないためです。
最近の子どもたち、大人もそうですが、食べ物をよくかまない傾向にあります。
それは、スーパーなどで、出来上がった食材が多くあったり、コンビニでやわらかくて小さく食べやすい食べ物などが手軽に買えるようになってきている、などの便利さにより、かまなくなってきているためでしょう。
さらに、姿勢は大人と子ども、それぞれ悪くなってきています。
交通機関の発達により、運動や歩く機会が少なくなり、子どもも外で遊ぶ機会が少なくなり、さらにパソコンやゲームが多くなり、姿勢も悪くなってきていると考えられます。
姿勢が悪い=猫背で頭が前に出る⇒下顎が後ろにさがる⇒下顎後退
ですから、出っ歯(上顎前突)=下顎後退症、とも言えます。
*治療
矯正治療は出来る限り歯を後方に下げていくのですが、大人の場合限界があります。
歯並びのアーチを広げたり、歯と歯の間のエナメル質の部分を0.25mmほど削ってスペースをつくり、少しでも後ろに歯を動かしていくのです。
子どもの場合は小学校低学年までであれば、“前歯でよくかむ”、“姿勢を良くする”などで、上下のあごの成長や、上下のあごのかみ合わせの関係を良い状態に変えていくことが出来ます。
そして、大人も子どもも、たとえ永久歯を抜いて歯を後ろに下げたとしても、原因である“かみ方”と“姿勢”を変えていかなければ、次第にまた後戻りして“出っ歯”は再発します。
2.反対咬合(受け口)
*原因
受け口は遺伝的なものが大きいです。
ご両親のどちらかが受け口であれば、ほとんどの場合お子さんにも出てきます。
環境的なもの(後天的なもの)では、舌の位置、動かし方が原因となります。
舌の動かし方で、通常舌は上あごの口蓋(こうがい)の部分にピタッとくっつくのですが、くっつかない人がいます。
これは舌癖(ぜつへき)、不良嚥下癖(ふりょうえんげへき)とも言って、しゃべるとき、飲み込むとき、呼吸するときなどに舌が前方に出てきてしまうのです。
そして下あごも一緒に前に押し出されてきてしまうのです。
*治療
大人の場合、重度の場合は矯正治療は難しく、外科的にあごを切る手術、さらに永久歯を抜いて可能な範囲での治療となります。
さらに、原因は舌の動きですから、形態を変えても、舌の動きが変わらないと、また、舌によってあごが前に押し出されて再発します。
したがって、大人になる前、子どもの成長期前に対処しなくてはなりません。
子どもの場合、子どもの歯の時期、乳歯列期に反対咬合の場合、4歳以上であれば、マウスピースなどを使って治療します。
様子をみていては(放置しては)いけません。
永久歯に生えかわる前がチャンスです。
永久歯に生えかわるときもしっかりと上の前歯が下の前歯の内側に入らず、外側に出るか、よく見ていなくてはなりません。
前歯が逆に入ってしまうと、それに合わせてどんどん他の歯が生えてきて、放置すれば、骨格性に移行し顔が長くしゃくれてくることもあります。
とにかく、受け口はできるだけ早期の受診を心掛けてください。小学校高学年になると、矯正治療が困難になります。
3.開咬
開咬(かいこう)は上下の歯の間に隙間がある状態。
歯並びは比較的良い場合が多いです。
*原因
受け口と同じで舌が通常の上あごの口蓋にくっつかず、前に出てきている状態です。
舌を常に上下の歯の間から前方に出しているのです。
開咬が良くないのは、前歯がかみ合っていないので、奥歯にその分負担がかかってしまうことです。
奥歯の特定の歯の負担が大きくなり、歯が長持ちしにくいです。
*治療
開咬だけで、歯並びはそれほど悪くない場合、マウスピース矯正(インビザライン)で比較的短期間(1年くらい)で良くなりますが、舌の動きが原因なので、受け口(反対咬合)と同様に、舌のトレーニングによって舌の動きを変えていく必要があります。
後戻りもしやすいので、保定期間も長く必要です。
4.叢生
叢生(そうせい)は歯が重なっている状態のことです。
歯の重なっている状態なので、“不正咬合”には含まれないかもしれません。
上顎側切歯が内側に入ってしまい、かみ合わせが変わってしまうケースは多くあります。
*原因
歯の並ぶスペースが少ないため。
前歯の交換時期(小学校入学時)に前歯でよくかんでいないと叢生になりやすいです。