歯並び、噛み合わせの話
小学校の歯科健診をしていて、毎回感じることは、お子様たちの歯並び、噛み合わせの状態が良くないこと、です。
私、近藤は市内の歯科医院で子どもの矯正治療を行っています。
そして、西砂小の歯科学校医として15年ほどお子様たちのお口の様子を診させてもらっていますが、年々歯並び、噛み合わせの状態は悪くなっていると感じています。
これは、西砂小に限ったことではなく、私のクリニックに来院される子どもたちも同様です。
では、なぜ状態が悪くなったのでしょうか?
原因は数多くあると思います。
第一に挙げられるのは、生活習慣、食生活の変化だと思います。
生活習慣では、赤ちゃんの時の哺乳の状態、離乳食の与え方、などから始まり、歩いたり、外で遊んだり、といった適度な運動が不足している、などといったことの積み重ねが考えられます。
食生活では食べ物が食べやすく加工されていたり、やわらかいもの、スナック菓子などが増えていることなどが考えられます。
第二に挙げられるのは、体質の変化、アレルギーなどによる鼻づまり、口呼吸によるもの、さらに食べ物を噛んだり、飲み込んだり、発音したり、という口腔機能の低下による顎(あご)の成長不足も大きな原因です。
第三に挙げられるのは“情報不足”です。
“子どもたちの歯並び、噛み合わせの状況が悪くなっている”という情報が世間一般に、保護者の方々によく伝わっていないと思います。
これは歯科医師側にも責任があると思いますが、歯科業界のほうからもっと発信していかなくてはいけないと感じています。
ただ、従来歯科の分野は、むし歯、歯周病の治療をする“一般歯科”と歯並びを治す“矯正歯科”に分かれていて、それぞれ別の分野になっていて別の歯科医師が治療にあたるようになっていたので、そういう変化に気づく歯科医師が少ないといえます。
私は、一般歯科、矯正歯科どちらも行なっていますので、お子様たちの変化を強く感じます。
さらに、私のクリニックに来られるお子さんたちを診て、歯並び、噛み合わせの状態の悪化とともに口腔機能の低下も感じています。
小学校の1年から6年までは子どもの歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)に生えかわる大事な時期。
さらに身体も心も大人に向かって成長する大事な時期です。
生活習慣、食生活、体質、体力、性格などに影響される“歯並び、噛み合わせ”は、そのお子様の成長状態の方向性をよく表していることのひとつだといえます。
次回から具体的に歯並び、噛み合わせの説明をいたします。
正常な歯並び、噛み合わせ
正常な歯並びとは、歯が重なっていない状態です。
正常な噛み合わせとは、上下の前歯が、上の歯が下の歯より前に出ていて、下の前歯を上の前歯が覆っている状態です。
個人差はありますが、1年生では、まだ上下の前歯が生える途中のため、しっかりと噛み合っていない場合があります。
しかし、3年生くらいになっても、上下の前歯が噛み合っていない場合は要注意です。
不正咬合、良くない歯並びとは?
こちらの不正咬合もご参照下さい。
- 叢生(そうせい)
歯が重なって生えている状態、このまま、様子をみていると、どんどん重症化します。
犬歯が横に出ている場合“八重歯”といわれます。 - 上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上の前歯が出ていて、いわゆる“出っ歯”の状態。12歳を過ぎると、永久歯を抜かないと良くなりません。 - 下顎前突(かがくぜんとつ)
下の前歯が出ていていわゆる“受け口”の状態。早期に治さないと次第に下あごが前に出てきて、顔のかたちもしゃくれた顔になってしまいます。 - 開咬(かいこう)
上下の歯が咬み合わさらない状態
大事なことは、保護者の方がお子様の歯並び、噛み合わせが“おかしい”と感じましたら、すぐに歯科に相談に行くことです。
ただし、歯科の分野では、むし歯治療などを行う「一般歯科」と矯正治療を行なう「矯正歯科」が“違う診療科目”になっていて、同一の歯科医院、歯科医師で細かく相談に乗れるところが少ないことです。
さらに「矯正歯科」でも、「成人矯正」と「小児矯正」は考え方が違う、ということも考えなくてはなりません。
では、どうやって歯科を探すかですが、以下選び方を挙げてみました。
子どもの矯正(小児矯正)を多くやっているところ大人の矯正と子どもの矯正の矯正では考え方が違います。
矯正できる歯科医師が常時いるところ一般歯科で矯正する歯科医師が月に1~2回来るという状況よりも毎日、直ぐに診てもらえる方が安心です。
- 矯正できる歯科医師が常時いるところ
一般歯科で矯正する歯科医師が月に1~2回来るという状況よりも毎日、直ぐに診てもらえる方が安心です。 - お母様方の紹介
実際に体験されているので安心です。 - 永久歯をなるべく抜かないところ
以前は矯正治療では、永久歯を抜くのが当たり前でしたが、最近は抜かない方向に変わってきています。
以上、歯科医院選びのご参考にされてください。
年齢(学年)別のチェックポイント(個人差はあります)
- 1年生・・・上顎は前歯(真ん中の中切歯)と下顎は前歯4本が生えているか?また、上下の前歯の噛み合わせは?
上下の一番奥に6歳臼歯(第一大臼歯)が生えているかどうか? - 2年生・・・上顎は中切歯に続いてその横の側切歯が生えているかどうか?また、上下の前歯の噛み合わせは?
前歯の噛み合わせが逆になっている、または、“目立つ出っ歯”の場合、歯科受診を!
上下の一番奥に6歳臼歯(第一大臼歯)が生えているかどうか?
この時点で6歳臼歯が生えていない場合は歯科受診へ。 - 3年生・・・前歯に続いて横の小臼歯(上下の第一小臼歯)も生えてくる時期。下顎は乳歯の犬歯が抜ける時期。上顎の乳歯の犬歯はまだ、生え変わらない場合が多いです。
この時期、上の前歯が“出っ歯”ぎみになって気になる場合は歯科受診をお勧めします。
もちろん、噛み合わせが逆(反対咬合)の場合も歯科受診を! - 4年生・・・そろそろ、上顎犬歯が生え変わる時期です。前歯が4本並んでいたとしても、犬歯がきれいに並ぶケースは少ないです。
確認のため、歯科を受診されてもいいと思います。
できれば、犬歯の並ぶスペースがあるかどうか、歯科で確認してもらってください。
生えかわりの早い子は奥歯も抜けて、そろそろ子どもの歯がすべて生えそろいます。
さらに、この時期までに前歯の噛み合わせ(受け口、出っ歯)を治しておかないと、これから背がグーンと伸びる時期になると、さらに重症化しますので注意が必要です。
重症化とは、単に“歯の問題”から“顔の問題”になる、顔のかたちまで変わってくるということです。
ただ、この時点で歯科を受診したとしても、矯正治療は時間がかかりますから、遅すぎるきらいはありますが、それでも、マウスピース矯正など、矯正治療の進歩により、ある程度対応可能です。 - 5年生・・・上顎の犬歯も生え、ほぼ歯列は上下完成してきます。
生え変わりの遅いお子さんは、まだ、乳歯が(乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯の3本)残っているケースもあります。
上顎の犬歯がきれいに並ばず、八重歯の状態になり、お子さんが気になっている場合も歯科受診をおすすめします。
矯正治療は期間も手間も費用もかかるので、お子様ご本人のやる気が第一です。
医学的には、矯正治療の開始時期が遅くても、ご本人がやる気になれば、良い結果が出やすいのです。 - 6年生・・・多くのお子さんが子どもの奥歯の第二乳臼歯を残して歯の生え変わりが完了します。
そして、下顎の一番奥(親知らずは除く)の歯である12歳臼歯(第二大臼歯)の生えるのを待つ段階になります。
ここで注意していただきたいのは、最近の傾向として、この下顎の第二大臼歯がまっすぐに生えてこないお子さんが増えているということです。
ちゃんと生えてきているかどうか確認してあげてください。
横向きに歯が倒れて生えてきたり、よく分からない場合は、歯科を受診されてください。